AirPlay対応DAPってなに?
「家電批評」24年9月号でミドルクラスのDAPを比較しました。そこで取り上げたのはOSとしてアンドロイドを搭載した機種で、スマホと同じようにアップルミュージックやアマゾンミュージックにアクセスできます。
ただ、7万〜9万円と高価で気軽に買えるものではありません。
ところが、最近、AirPlayに対応した低価格なDAPが登場。iPhone限定にはなりますが、ストリーミングサービスを活用できるようになりました。屋外ではiPhone側の電波状況が悪いと音が途切れる場合があるもののAirPlayの挙動自体は安定。
地下鉄など電波が飛び交う場所でも十分再生できました。もちろん、AirPlayよりDAPにハイレゾ音源を直接入れたほうが音質は良いのですが、AirPlayで気軽に楽しめるのは大きなメリットです。
今回、「家電批評」編集部では、AirPlay対応DAPのSHANLING「M1 Plus」とHiBy Music「HiBy R1」を徹底比較しました!
ハイレゾ音源の劣化を抑えて楽しめるのがAirPlay
Apple MusicやAmazon MusicではCD音質やそれを超える高音質な「ハイレゾ音源」が多数配信されています。こうしたハイレゾ音源をワイヤレ スで楽しむにはLDACやaptX HDなど高品質なBluetoothコーデックでスマホからイヤホンへと音源を転送したいところ。
現在では手頃な価格のLDAC対応イヤホンも増えていますが、iPhoneはLDAC等に非対応。音質面でやや不利なAACコーデックになってしまいます。
iPhoneではBluetoothイヤホンの音質を発揮しきれない
一方、iPhoneではWi-Fiで音源をスピーカーなどに転送できる「AirPlay」が利用可能です。AirPlayの音質はCDレベルとされておりiPhoneのBluetooth接続よりは確実に高音質!
実は最近、AirPlayに対応した「DAP」(音楽専用のプレーヤー)が増えつあります。AirPlayは屋内ではWi-Fiで、屋外でもiPhoneとDAP間をテザリングで接続すれば利用可能。
AirPlay対応のDAPなら、iPhoneの取り回しを邪魔せず高音質を楽しめる
DAPではこのように有線イヤホン・ヘッドホンで音楽を楽しみます。今回はAirPlay対応で手頃な価格のDAPSHANLING「M1 Plus」とHiBy Music「HiBy R1」の2製品試します。
AirPlay対応DAPの検証方法は?
高音質なスマホ代表として「Xperia 10 Ⅲ」で再生し、それを基準に2モデルを採点。採点時はmicroSDカードに入れた内蔵音源を有線ヘッドホン「MDR-MV1」などでチェック。
今回、オーディオライターのゴン川野さんとクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんと一緒に検証しました。
SHANLING「M1 Plus」
SHANLING「M1 Plus」
- おすすめポイント
-
- AirPlayの動作が安定
- 価格に見合った高音質
- USB-DAC機能に対応
- がっかりポイント
-
- ストリーミングサービス非対応
- 幅
- 61mm
- 奥行
- 17mm
- 高さ
- 86mm
- 重量
- 116g(約)
- DAC
- ES9069Q
- 出力端子
- 3.5mm・4.4mm
- 対応フォーマット
- DSD512、PCM768kHz / 32bit
- OS
- MTouch 2.0
- 対応コーデック
- Bluetooth AirPlay USB-DAC 4.4mm
- 型番
- M1 PLUS SV
【テスト1:使用感】USB-DACに対応 活躍シーンが増える
5GHz帯のWi-Fiに非対応でWi-Fiの感度も弱めですが接続すれば挙動は安定。
ダイヤル式のボリュームなので音量を素早くコントロールできます。
USB接続で再生すればAirPlayよりさらに高音質で再生可能です。
操作はシンプル。ただし、検索機能が英語と中国語専用なのは残念。
【テスト2:音質】解像度が高く高音域に個性がある!
解像度 18.3/20
解像度はかなり高くマイケル・ジャクソンのボーカルの余韻も出る(川野)。解像度は高いが音は太め(飯田)。
クリアさ 8.3/10
かなりクリアだが音色はクールになりすぎず◎(川野)。太くどっしりしておりクリアさはR1にやや劣る(飯田)。
音域のバランス 16.8/20
低域がやや寂しいが概ねフラットバランス(川野)。 バランスの良さはスマホ(Xperia)と同レベル(飯田)。
音像定位 7.3/10
サウンドステージが感じられ、独奏者とそれを囲むオ ーケストラ、といった空間的なメリハリが味わえた(飯田)。
ダイナミクス 8.5/10
ダイナミックレンジの広いマイケル・ジャクソンの楽曲をきちんと再生。大音量にも強い(川野)。
AirPlay再生品質 4.3/5
情報量がほとんど減ることなく再現でき立派(川野)。全体的にやや細めの、HiBy寄りのサウンドに(飯田)。
音質評価 63.5/75
数年前の高級DAPに匹敵する実力(川野)。スピーカー で聴くのが好きな人でも満足できるふくよかな音(飯田)。
相性のいい楽曲
オーケストラがおすすめ(飯田)。高音域の抜けがよく滑らかなので女性ボーカルに特にマッチ(川野)。
バランス接続端子「BAL」(※)搭載さらなる高音質化も狙える
4.4mmのバランス接続端子も搭載。「低域の解像度が上がる」「太いサウンドが一段とふくよかに」と試聴結果も上々!
※3.5mm端子を使う一般的なアンバランス接続と異なり、ステレオを構成する回路(電気の流れ)のうち「グランド」を左右で独立させた方式(アンバランス接続では左右のグランドは共通)。解像感や音像定位の向上に寄与します。使用する端子は4.4mmが主流です。
HiBy Music「HiBy R1」
HiBy Music「HiBy R1」
- おすすめポイント
-
- 起動・終了が高速で軽快な動作
- Qobuzに対応
- がっかりポイント
-
- USB-DAC機能には非対応
- Wi-Fiの感度がイマイチ
- 幅
- 51.1mm
- 奥行
- 12.35mm
- 高さ
- 83.5mm
- 重量
- 70g
- DAC
- CS43131
- 出力端子
- 3.5mm
- 対応フォーマット
- DSD256、PCM384kHz/32bit
- OS
- HiBy OS
- 対応コーデック
- Bluetooth、AirPlay
- 型番
- R1 WHITE
【テスト1:使用感】ポケットに余裕で入る超小型サイズが嬉しい!
5GHz帯のWi-Fiに非対応でWi-Fiの感度も弱めですが接続すれば挙動は安定。
SDカード内の楽曲は日本語でソートできないのが残念。タッチ操作は軽快!
Qobazというハイレゾ音源のストリーミングサービスに直接アクセスできます。
【テスト2:音質】値段的に十分健闘! クラシックとは好相性
解像度 15.0/20
音の粒立ちがよく音の輪郭がクッキリ(川野)。スマホ(Xperia )より線の細さを感じる音で解像感がUP(飯田)。
クリアさ 8.0/10
クリアでJポップとの相性がいい(川野)。スマホより かなりクリア。やや硬質な音色だが硬すぎない(飯田)。
音域のバランス 14.8/20
やや低域が薄い。音楽全体の厚みもやや薄く感じられる(川野)。低域が薄いためやや高域が目立つ(飯田)。
音像定位 6.3/10
マイケル・ジャクソンではボーカルが強めで立体感がやや物足りない。音像定位自体は悪くない(川野)。
ダイナミクス 7.5/10
小音量でもダイナミックレンジが確保されている(川野)。ピアノの弱音表現や、音域間のダイナミクスも十分(飯田)。
AirPlay再生品質 3.0/5
思ったより音質は劣化せず音量もとれる。実用的(川野)。迫力が落ちてしまうのは残念(飯田)。
音質評価 54.6/75
ヘッドホンによっては大音量が出づらい(川野)。艶のある高音域が特徴的で、好きな人はハマりそう(飯田)。
相性のいい楽曲
ボーカルものより、打ち込み系など歯切れのよさにこだわる曲(川野)。ピアノやヴァイオリンなど高音でメロディを奏でる曲(飯田)。
クリアで線は細いけど艶がある。でも、細いだけでなく芯もある。そんな音作りを感じました。
クラシック中心に試聴した飯田さんと、Jポップ中心の川野さんで意見が分かれる結果に。iPhoneより高音質なのは間違いありません。
Q:スマホではなく専用機を使う意義とは?
A.本体設計をオーディオに最適化! さらに、有線 イヤホン・ヘッドホンの性能をフルに発揮できる
イヤホンジャックも高品質!
DAPはオーディオ機材として開発されています。そのため、音楽をアナログに変換するDACチップや内部のノイズ対策、ヘッドホン端子の品質などスマホより贅沢なパーツを使用。
有線イヤホンやヘッドホンにはスマホやPCのイヤホンジャックでは音量不足にな るものもありますがDAPなら音量を稼ぎやすいのもメリット。また、メーカーごとに音作りに特徴もあります。
35mmのウーファーと12mmのツイーターの2wayドライバーを搭載。それぞれ別アンプで駆動します。
手頃で高音質! おすすめ有線イヤホン
DAPのおすすめは分かったけどイヤホンは?ということで、1万円前後の有線イヤホンを飯田さん、川野さんが聴き比べし、おすすめ2本をここで解説します。
水雨月(MOONDROP)「U2」
- 水雨月(MOONDROP)U2
- 実勢価格: ¥7,200〜
- 型番
- U-2
きちんと音楽鑑賞ができるな、という印象。コスパよすぎる! まったくチープな音がしません!
オーツェイド「Maestraudio MA910S」
- マエストロオーディオMA910S
- 実勢価格: ¥7,726〜
- 付属品
- iSep01イヤーピース(S/MS/M/L)、イヤーフック、本革コードリール、保証書
- 型番
- OTA-MA910S-MNT
高域が繊細で中低域はなめらかな音。 全体に聴きやすくまとまりがいい。楽曲を選ばず楽しめます。
専用機のほうが音楽をじっくり味わいやすい!
音質などの好みで選んでも楽しめる
以上、AirPlay対応DAPの2製品、SHANLING「M1 Plus」とHiBy Music「HiBy R1」の紹介でした。
今回ベストバイに輝いたSHANLING「M1 Plus」は、高音域の抜けがよく滑らかなので女性ボーカル特に合います。数年前の高級DAPに匹敵する実力で、クリアさもあり、オーケストラといった空間的なメリハリも味わえます。
HiBy Music「HiBy R1」は、音の粒だちがよく音の輪郭がくっきりしていてJポップとの相性が良いです。iPhoneより高音質ですが、低域が薄いためやや高域が目立ちました。
どちらも好みで選んで問題ないので、この記事を参考にAirPlay対応DAPデビューしてみるのはいかがでしょうか?
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線の細さが魅力のHiBy Music「HiBy R1」とは、まったくサウンドが異なるので、個人的には好みで選んで欲しいです。