シュアの「交換式完全ワイヤレスイヤホン」って?
アメリカの老舗イヤホンメーカー「シュア」。同社は長らく有線イヤホンを主力としてきたメーカーで、代表的なイヤホン「SEシリーズ」は10年以上、プロやオーディオ趣味の世界で親しまれている超ロングセラー商品です。
同社のイヤホンはイヤホン本体(筐体)とケーブルをMMCXという小型のコネクタで接続する設計が大きな特徴。この設計ならケーブルが断線してもケーブル交換で補修できます。
ところが、ご存知の通りイヤホンの世界にはワイヤレス化の波が……。そこでシュアが開発したのが既存の有線イヤホンとMMCXで接続できるワイヤレスアダプターです。これなら10年もののイヤホンも完全ワイヤレスにできるし、イヤホン本体にはメスを入れないので音質面も有利なはず。かくして2020年に「交換式の完全ワイヤレス」が登場しました。
しかしこの2020年に発売の初代アダプターは、一時発売を見合わせたほどの不具合がありました。そこで昨年、第2世代として登場したのが、今回ご紹介する「TRUE WIRELESS SECURE FIT ADAPTER GEN 2」(通称「TW2」)です。
シュア
TRUE WIRELESS
SECURE FIT
ADAPTER GEN 2
実勢価格:2万4970円
シュアのさまざまなイヤホンとの組み合わせや連携するスマホアプリの活用なども含め、「TW2」の使い勝手をじっくり検証していきたいと思います。
▼第1回 「TW2」の概要紹介はコチラ
TW2にベストなMMCX端子搭載イヤホンを検証
『家電批評』2022年3月号では、シュアのアダプター「TW2」に対応する、MMCX端子搭載のイヤホン7製品で音質検査を敢行。音の専門家とともにすべての組み合わせを聴き比べ、TW2にベストなイヤホンを探りました。
シュアのイヤホンは、総じて中音域(音の情報量が多く、空間や奥行きを感じるための中核となる)の質が高いことが特徴です。また極端な演出もないのでエントリーモデルでは素直な音を味わえます。
そんななか、7製品でベストを獲得したのは、音の情報量が豊富な「SE846」でした。
「TW2」のベストマッチイヤホンは「SE846」
シュア
SE846
実勢価格:9万9700円
発売:2013年
▼テスト結果
- 低音域の質 :17.5/20点
- 中音域の質 :18.75/20点
- 高音域の質 :18/20点
- ダイナミクス:18/20点
- 装着感 :8.5/10点
- 遮音性 :9/10点
- 音の表現 :やや迫力系
- バランス :中間的
- 音場感 :ワイド寄り
- 総合得点 :89.75/100点
シュア「SE846」は、豊富な情報量と歪みのない空間表現が秀逸。中音域の質のよさと控えめな高音も繊細です。また、気づきにくいギターの弦やピックなどの音や表現、楽曲の世界観の中にしか存在しないリアリティを存分に堪能できました。
「TW2」を選ぶ最大の理由はイコライザーかも
イヤホン界の名機をワイヤレスで使えるのが魅力の「TW2」ですが、その最大の特徴はイコライザー機能かもしれません。EQアプリ「ShurePlus PLAY」は、音の専門家も絶賛する超本格派。自分の音を追求することができます。
▼ShurePlus PLAY
ShurePlus PLAY
実勢価格:価格無料(Andorid/iOS)
他メーカーのEQの多くは固定された周波数ごとに音量を調節するタイプで、思いどおりの音質にするには難しいものばかり。しかしシュアのEQは変動可能な周波数の帯域幅を調節することができ、より理想に近い音像にすることが可能です。たとえば、ピンポイントでうるさく感じる楽器を小さくするなど、もともとハイレベルなシュアのイヤホンを好みの味付けにできるんです。
イコライザーで劇的変化!
基本的な使い方としては、4チャンネルのうち高低両側の2つのエリアで音の傾向を決めたうえで、残りの2チャンネルで耳障りな音域を絞ったり、不足している音域を足すのがおすすめです。
こんなふうに使います
たとえば耳ざわりな楽器の音を減らしたいときは、帯域幅を狭くしてゲインをUP。バンドを左右に動かして耳障りな音が一番うるさい周波数を探します。
周波数を特定できたらそこを垂直に下げればOK。あとは試聴しながら微調整しましょう。
専門家がEQするとこうなりました
斉藤和義『歩いて帰ろう』をSE215でEQしてみました。今回検証にあたった2名の専門家の調整を見ると、使い方のイメージが掴みやすいと思います。特に大澤さんのEQは音の変化がわかりやすいです。
大澤さんのEQ
この楽曲専用に攻めたセッティングです。「歩いて帰ろう」は中音域主体のミックスのため、1と4で低音と高音域を中心に持ち上げて足りないエネルギーを補います。なお、1はドラムのキックが目立ちすぎない周波数を探したのがポイント。2と3は特定の楽器に注目した調整です。
緩く録音されている曲なのでEQでエネルギーを継ぎ足して現代的に!
原田さんのEQ
楽曲をアレンジせず、215の特性に合わせてほんの少し調整するEQです。低音域の弱さを補うために低音域を持ち上げ、また高音も出きっていないところを「わかるかわからないかぐらい」プラス。そしてボーカルの言葉をはっきりさせるために、1000Hzあたりをちょっと突いています。
SE215は完璧な音ではないので「補完する」方向でEQを調整しました。
まとめ:音を楽しみたい人は買いです!
「TW2」はイヤホン界の名機をワイヤレスで使え、音質もハイレベル。しかもプロも絶賛するEQ機能によって、もともとハイレベルなシュアのイヤホンを好みの味付けにできる稀有なイヤホンです。
▼よかった点
- パラメトリックEQ
- シュアイヤホンとのセットでノイキャン並の遮音性
- 実用的な外音取り込み
- 組み合わせ次第で相当な高音質に
▼残念な点
- 装着検知機能がない
- ケースと本体が大型
- LDACコーデックに非対
シュアのユーザーは昔からケーブル交換による音質向上などのカスタムを楽しんでいました。TW2は、この「いじる楽しみ」をワイヤレスの世界に持ち込んだ製品といえます。今回の結論としては、音にこだわる人にはぴったりなおすすめ製品です。
イヤホンの売れ筋ランキングもチェック!
イヤホンのAmazon・楽天の売れ筋ランキングは、以下のリンクからご確認ください。
下げたい音も上げたい音も、ゲインをあげて探すのがコツ。