性能表からは見えないプリンターの実力をテスト
プリンターは他のパソコン周辺機器に比べて買い替え頻度が低いため、意識して追っていないとトレンドや進化がわかりにくいものです。
ここ数年での大きな動きとしては、専用アプリによるスマホ連動とボトル式の登場が挙げられます。特にボトル式は「本体を安く売ってインクで儲ける」といわれる、インクジェットプリンターにおけるビジネスモデルをメーカー自ら破壊したとして話題になりました。
しかし、ボトル式は大量印刷する環境を対象としているので、一般層向けの主流は以前と変わらぬカートリッジ式のプリンターです。
360.lifeが考えるプリンターの選出ポイントは、「印刷品質」、「コスト」、「使いやすさ」の3点です。
印刷品質は目に見えてわかるプリンターの性能です。印刷解像度に目を奪われがちですが、上記したようにインクの種類によって印刷適性があるので、まずは、こちらを確認しましょう。
次にコストですが、本体価格と併せて確認したい要素に印刷単価があります。いくら本体価格が安くても、印刷単価が高いと使っているうちに旨みがなくなっていきます。使用頻度と本体価格・印刷単価の両方を考慮しましょう。
最後のポイントである「使いやすさ」は、基本的な部位やインターフェースの作りやプリンター独自の付加価値によって変化します。実際に使わないとわかりにくい部分ですが、ここでは3大メーカーの最新インクジェット上位モデルを比較検証しました。
3大メーカーの特徴を紹介します!
プリンターの3大メーカーである「エプソン」「キャノン」「ブラザー」の特徴を紹介します。商品を選ぶ際の参考にしてみてください。
写真画質を重点におくエプソン
エプソンのプリンターは、6色や8色の染料インクを採用することで写真の印刷に力を入れています。エプソンで有名なのは「カラリオ」シリーズ。写真の画像がとても鮮明でクオリティが高いです。
エプソンには、ランニングコストを抑えたエコタンクモデルやA3サイズに対応した機種などがあり、プリンターの機能性を高めてきていると言えるでしょう。
ラインナップが充実しているキャノン
キャノンのプリンターは、画像の印刷も文字の印刷も得意な「PIXUS」シリーズが有名。顔料と染料のインクを組み合わせたハイブリッドインクを採用しているため、画像も文字もバランスよく印刷できます。
家庭用プリンターだけでなく、プロの写真家にも人気の高い機種や特大容量のギガタンクを搭載した機種があり、キャノンはラインナップが充実しています。
コスパの良いブラザー
ブラザーのプリンターは、低コストで高機能な「PRIVIO」シリーズが人気。ブラザーは6色インクを採用していないため4色インクのみですが、染料3色と顔料ブラックの4色でも、写真も文字も十分鮮明に印刷できます。低コストでプリンターを使用したい方の候補にまず挙がるはず。その性能は今回のランキングで詳しく解説しているのでぜひご確認ください!
また、小型なレーザープリンターも見逃せません。小型なので家庭用としてレーザープリンターをお考えの方の候補に挙がることでしょう。
プリンターに何を求めるか。3種類から選べます
プリンターには求める機能によって大きく分けると3種類あります。
印刷機能のみなら単機能プリンター
単機能プリンターは、印刷機能のみに絞られています。コピーやスキャナー、FAX機能が搭載されていないため本体価格はリーズナブル。コンパクトサイズなので省スペースに設置できるのも魅力です。
また、単機能プリンターはA3サイズ対応など印刷する用紙サイズの自由度が高い機種があるのも特徴です。
写真のみの印刷ならフォトプリンター
写真の印刷のみに利用する場合はフォトプリンター。フォトプリンターは写真の印刷のみなので本体サイズが小さくコスパもよく魅力的。パソコンだけでなく、デジタルカメラやスマートフォンから印刷可能な機種がほとんどなので使い勝手が抜群です。
印刷できる用紙が写真サイズに限定されていることもあるので、購入前に印刷できる用紙サイズを確認しましょう。
印刷以外の機能も必要なら複合機
コピーやスキャナー、FAX機能が備わった複合機が家庭用プリンターの中でも人気です。1台でさまざまな機能が使えるので汎用性が高いのが特徴。
単機能プリンターやフォトプリンターに比べるとサイズは大きくなりますが、FAXやスキャナーを別に用意するより省スペースで済みます。今回はこのタイプを取り上げてランキングにしました!
プリンターの型落ち機は意外と超絶お買得です!
本筋に入る前にひとつお得な知識として知っておきたいことをお伝えします。プリンターがフルモデルチェンジした場合などは、性能や機能に大きな差がある場合もありますが、マイナーモデルチェンジの場合、性能差に比べ価格差が大きくお買い得になることがある、ということ。
例えばエプソンの場合、「EP-882A」の型落ちは「EP-881A」で、スペックはほぼほぼ同じです。にもかかわらず実売価格はタイミングにより約半額にもなりで非常にお買い得です。
2019年モデル
エプソン
EP-882A
実勢価格:2万5525円
↓ほぼほぼ同じ性能で格安!
2018年モデル
エプソン
EP-881A
実勢価格:1万6940円
インクジェットプリンターの選択基準はインクです
まず最初に、インクジェットプリンターのインクには写真印刷に適した染料インクと文字印刷に適した顔料インクがあるということを知っておきましょう。
顔料の黒+染料のシアン・マゼンタ・イエローという4色が一般的な構成ですが、一部の機種は4色以上のインクを搭載しています。
写真印刷に適しているのは染料インク
文字印刷に適しているのは顔料インク
インクの形状で本体価格と印刷単価が大きく変わります!!
インクにはカートリッジ式とボトル式があります。カートリッジ式は本体価格が安く印刷単価が高い、ボトル式は本体価格が高く印刷単価が安いという特徴があるので、印刷頻度に応じて選択しましょう。
メーカーはボトル式を推しつつありますが、自宅で時々使うという程度ならカートリッジ式がおすすめ。
大量に印刷する人向けのボトル式
(エプソンEW-M770Tの場合)
本体が高く印刷単価が安い
普通に印刷する人向けのカートリッジ式
(エプソンEP-882Aの場合)
本体が安く印刷単価が高い
印刷能力と使いやすさでカートリッジ式プリンターをジャッジします!
【写真・年賀状・普通紙印刷チェック】
年賀状や細かい文字・線の
印刷品質を調査
写真要素と文字要素の両方が入る印刷年賀状に加え、細かい文字・細い線の印刷品質を比較します。
インクジェットの花形機能
写真印刷を検証
写真印刷は検証用に用意した10枚の画像を3台のプリンターでそれぞれ印刷して、同じ写真を4人の検証者が見比べます。性能通りの順位になるかどうかが最大の見所です。
【使いやすさチェック】
用紙トレイやインター
フェースは使いやすいか?
基本的な部位やインターフェースは、使っていてストレスがないか。また、印刷以外の機能に関しても調査します。
【検証ラインナップ】
検証したのはインクカートリッジ式複合機の
最新上位モデル3機種です。
エプソン
EP-882A
実勢価格:2万5525円
[インク]6色
[インク構成]染料6色
[印刷解像度]5760x1440 dpi
[スキャン解像度]1200x4800 dpi
[無線LAN]IEEE802.11b/g/n
●サイズ・質量/W349×D340×H142mm・約6.8㎏●給紙容量/前面トレイ:A4最大100枚・背面トレイ:1枚●外部メディア読み込み用インターフェース/SDメモリーカード・Hi-Speed USB・IrDA(Ver.1.2準拠)●有線LAN/あり●スマホ連動/あり●光学ディスク印刷/あり
染料6色という気持ちがいいくらい写真印刷に特化したインク構成の6色機。また、3台の中ではもっとも小さく、設置自由度が高いです
キヤノン
PIXUS XK60
実勢価格:3万5901円
[インク]6色
[インク構成]顔料1色+染料5色
[印刷解像度]4800x1200 dpi
[スキャン解像度]2400x4800 dpi
[無線LAN]IEEE802.11b/g/a/n
●サイズ・質量/W373×D319×H141mm・約6.6㎏●給紙容量/前面トレイ:A4最大100枚・背面トレイ:A4最大100枚●外部メディア読み込み用インターフェース/SDメモリーカード●有線LAN/なし●スマホ連動/あり●光学ディスク印刷/あり
顔料1色+染料5色という写真にも文字にもこだわった構成の6色機。3台の中ではもっとも高価ですが、印刷解像度の低さが気になります
ブラザー
DCP-J982N
実勢価格:1万2400円
[インク]4色
[インク構成]顔料1色+染料3色
[印刷解像度]6000x1200 dpi
[スキャン解像度]1200x2400 dpi
[無線LAN]IEEE802.11b/g/n
●サイズ・質量/W400×D341×H172mm・約8.6㎏●給紙容量/前面トレイ:A4最大100枚・背面トレイ:1枚●外部メディア読み込み用インターフェース/SDメモリーカード・Hi-Speed USB●有線LAN/あり●スマホ連動/あり●光学ディスク印刷/あり
本体価格は3台の中でもっとも安いですが、インク数以外、際立って劣る部分はありません。唯一、自動原稿送り装置を搭載しています
評価①:印刷力
検証写真は以下の10枚を用意し、3台のプリンターで各1枚づつを印刷。4人の検証者(カメラマン・女性/男性編集者・元印刷所勤務ライター)は、写真をどのプリンターで印刷したか知らない状態で、写真に1位(3点)から3位(1点)の順位を付けました。
写真に差がないと感じた場合は同率になります。
ここから、テスト結果を解説していきましょう。
【印刷力1位】写真印刷ならエプソン!染料6色の効果は絶大!
エプソン
EP-882A
実勢価格:2万5525円
通常のCMYKに加え、ライトシアン、ライトマゼンタという6色の染料インクが効果を発揮。視点の異なる4人が審査して3位が0枚という驚きの結果になりました。
【印刷力2位】年賀状は文字と写真のバランスでキヤノンに軍配
キヤノン
PIXUS XK60
実勢価格:3万5901円
CMYKの染料に写真用のフォトブルー、そして顔料の黒を加えた6色機。色の濃い写真を中心に、1位は最大の5枚を獲得。しかし、3位も3枚と多く、得手不得手がハッキリ分かれました。
インクジェット用年賀はがきに写真と文字を印刷して比較。キヤノンはどちらもバランス良くキレイに出力できました。
エプソンは写真はキレイでしたが、文字に滲みやぼやけが感じられました。逆にブラザーは文字はキレイでしたが、写真にザラつき感が…とバランスが微妙でした。
【印刷力3位】ブラザーは普通紙への文字&線印刷に優れます
ブラザー
DCP-J982N
1万2400円
唯一の4色インク機で、黒が写真に不向きな顔料インクという大きなハンデを背負ったブラザー。しかし、淡い色合いの写真ではエプソン、キヤノンよりも高評価を得るという驚きの結果に。
極小の文字と線を普通紙印刷してマイクロスコープで確認。どちらもブラザーが一番優れていました。
評価②:使いやすさ
【使いやすさ1位】エプソン独自機能の使いやすさは頭一つ抜けていました!
エプソン
EP-882A
[用紙トレイ]
トレイは3機種の中で唯一、同時3トレイの使用が可能。背面トレイは上部に付いているので、壁ピタが可能で設置自由度が高くなっています。
[スキャナー]
スキャナーは1200dpi×4800dpiで、キヤノンに次ぐ解像度。フタは厚みのある原稿を置くと閉められないという欠点があります。
[液晶モニター]
液晶モニターは4.3インチと大きめで見やすく、メディアからのダイレクト印刷の際は、画像の確認やトリミングにも使えます。
【使いやすさ2位】給紙能力が高く設定もラクに行えるキヤノン
キヤノン
PIXUS XK60
[用紙トレイ]
トレイは前後の2トレイながら、どちらも用紙サイズ自動検知機能を搭載。これにより用紙間違いによる印刷ミスが激減します。
[スキャナー]
スキャナーの解像度は2400dpi×4800dpiともっとも高いです。フタは蝶番部分が若干スライドするので厚みのある原稿も大丈夫。
[液晶モニター]
液晶モニターはエプソンと同じ4.3インチの大画面。アイコンが大きく、操作ミスしにくい配置になっています。
【使いやすさ3位】安価ゆえに機能面で差がつくも使い勝手は悪くないブラザー
ブラザー
DCP-J982N
[用紙トレイ]
前面トレイは大きい用紙と小さい用紙に分かれた2段式ですが、EP-882Aのように同時に使用することはできません。
[スキャナー]
スキャナーの解像度は1200dpi×2400dpiと3機種の中では一番低いですが、唯一ADF(自動原稿送り装置)を搭載しています。
[液晶モニター]
液晶は2.7型とやや小さめ。基本はタッチ操作ですが、右側に付いている物理ボタンも併用して操作します。
【インクジェットプリンタータイプ別ランキング】エプソン上位独占! とはいえ2万円以下も狙い目です!
このランキングは2019年に発売されたインクカートリッジ独立式のA4複合機(FAX 機能なし)12機種を対象にしたものです。
1位と2位は検証で紹介したエプソンとキヤノンのフラグシップ機。3位、4位もエプソンとキヤノンの性能2番機が続きます。ブラザーのDCP-J982Nは4色インク機の中では最上位という結果でした。
カートリッジ式
写真印刷のキレイさで選べばコレ!
エプソン
EP-882A
実勢価格:2万5525円
印刷コストと本体価格で点を落としながらも、基本性能の高さで首位を獲得したエプソンのフラグシップモデル。写真印刷に特化した性能とA4複合機としては非常にコンパクトな筐体を持っています。
印刷コストがダントツで安いフラグシップモデル
キヤノン
PIXUS XK60
実勢価格:3万5901円
総合ポイント 29/40pt
高い次元でバランスのとれたキヤノンのフラグシップモデル。ダントツに安い印刷コストが魅力です。
EP-882Aに次ぐ性能の2019年モデル
エプソン
EP-812A
実勢価格:1万9165円
総合ポイント 27/40pt
エプソン2019年モデルの性能2番機。印刷性能はEP-882Aと同等で、一部機能が簡略化されています。
公開性能から算出し、4位以降はこういったランキングになりました。検証した格安機・ブラザーの「DCP-J982N」も見事6位に入賞しています。
以上が最新プリンターランキングです。使用目的によって必要なインクの特性は変わってきます。
プリンターの性能だけでなく「何に使うのか」という点をあらかじめ考えておくと、プリンター選びがスムーズに進みます。ぜひ前もって検討しておきましょう。