テクニックはもはや無意味? ネット中心に出回る「確率機説」

最近は、スマホでもクレーンゲームが楽しめるようになり、YouTubeでは専用チャンネルが開設され、すでに10万人近くが登録し、100万再生を越える人気動画がゴロゴロ転がっています。

景品をゲットするため、せっせと100円を投入して腕を磨いている人も多いのではないでしょうか。しかし、どんなに練習しても、まったく意味がなかったとしたら……。そんなネットで噂の「確率機説」を編集部員が身銭を切ってガチ検証してきました。

テクニックはもはや無意味?ネット中心に出回る「確率機説」 クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ

なんでも、クレーンゲームはある程度の金額を投入することでアームの力を強くできる設定ができるといいます。いわゆる「確率機説」と呼ばれているもので、ゲーマーであれば誰でも耳にしたことがあるほどの定番ネタなのです。

この「確率機説」は、設定した金額を超えない状態ではどんなに絶妙なポジションにクレーンを落としても、アームの力が弱くてキャッチできません。それどころか、キャッチできても故意にアームを開いて、景品を落とすような仕組みになっているという説もあり、ネットで調べたときには、その狡猾な仕組みにあぜんとさせられました。

テクニックはもはや無意味?ネット中心に出回る「確率機説」 クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ2

考えてみれば、アームでかなりがっちりと景品を引き上げたのに、なぜかポロッと落ちてしまうことが多いような気もします。もしかしたら偶然落ちたのではなく、この必ず落ちてしまうような状態だったのかもしれません。

確率機が多いのは「3本アーム」? ネットの噂を元に検証しました

そこで、このモヤモヤした気持ちを払拭すべく、実際にクレーンゲームをプレイして「確率機説」が本当かどうかを検証しました。ちなみにこの都市伝説はオーソドックスな2本アーム機種ではなく、3つのアームを搭載する「3本アームタイプ=確率機」が多かったのです。

確率機が多いのは「3本アーム」?ネットの噂を元に検証しました クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ

【標準的な2本アームタイプ】
2本のアームで景品を挟むタイプ。左右から挟むだけなので、キャッチした景品がアームの隙間からこぼれることも多いです。またホールドも不安定で、クレーンを落とす位置を定めるのも困難です。

確率機が多いのは「3本アーム」?ネットの噂を元に検証しました クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ2

【噂の3本アームタイプ】
3本のアームで3方向から景品をつかむため、2本アームよりもホールド力は強そうに感じられます。クレーンを落とす位置が景品から多少ズレても、なんとかしてくれそうな印象を受けるのですが....

では、大量の小銭が次々と消えていく状況に悄然としながら、黙々とクレーンを操作し続けた編集部の孤独な戦いの模様をお伝えします。クレーンゲーム最大の黒い疑惑は、果たして解明されるのでしょうか?

[検証①件目]確率は「30分の1」 疑惑は限りなくクロに近いグレー

まずやってきたのは都内の有名繁華街にある某ゲームセンター。ピカチューのマネをするポケモン「ミミッキュ」のぬいぐるみが景品となっている北日本通信工業の人気クレーンゲーム「デカクレアルファ」に挑戦してみました。

[検証①件目]確率は「30分の1」疑惑は限りなくクロに近いグレー クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ

北日本通信工業
デカクレアルファ

デカクレアルファのアームはかなり細めで頼りない構造。しかし長くて奥行きがあり、景品と床面の隙間に爪が入り込むので、「これなら楽勝でゲットできるのでは?」と検証を始めましたが、アームはぬいぐるみをキャッチできずにするりと滑り抜けてしまいます。どうもアームの力が弱いようで、なかなか持ち上げることができないのです。

[検証①件目]確率は「30分の1」疑惑は限りなくクロに近いグレー クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ2

しかし、ついにアームがぬいぐるみをキャッチして、持ち上げることに成功。「これはいった!」と確信したのですが、アームが上昇しきった瞬間、無情にもぬいぐるみは落下してしまいました。

しっかりキャッチしているにもかかわらず、なぜ落下してしまうのでしょうか。クレーンが上がりきって支柱と接触するときの振動で落ちているように思えますが、アームが揺れるほど激しい接触でもありません……。

そんなキャッチ&リリースを何度か見ていると、つかんだ後でアームが上がりきったとき、やや緩んでいるような印象を受けました。もしかしたら、もっとお金を使えば、設定された「条件」を満たし、アームが緩まずに景品をキャッチしたまま投入口まで持ってこれるのではないでしょうか。やはり「確率機」のウワサは本当なのでしょうか。

最終的に1万円(60回分)を超える軍資金を費やしましたがダメ…。デカクレアルファでぬいぐるみを完全にキャッチしたまま投入口まで運ぶことはできませんでした。

ちなみにアームでぬいぐるみをホールドして持ち上げた後に落下したのが4、5回程度(60回中2回は転がって投入口にダイブ)。通常よりもアームの力が強まったための結果と考えれば、大体1/30くらいの確率で持ち上げられるということになります。とはいえ、完全キャッチ&ゲットがない以上、「疑惑」は限りなく黒に近い灰色のままです。

[検証②件目]都内と郊外で 「つかむ率」はまったく違う数字

失意のなかで向かった先は、東京郊外にあるゲームセンター。ここにも「デカクレアルファ」が置かれていて、星のカービィのぬいぐるみが景品です。まん丸としたボディのため、細身のミミッキュよりはキャッチしにくそうに見えます。

しかし、試してみるとアームはカービィーのボディをがっちりとキャッチ。そのまま持ち上げることはできましたが、やはり上がりきったところでストンと落ちてしまいます。とはいえ、都内ゲームセンターの「デカクレアルファ」はほとんど持ち上げることすらできなかったのに、ここでは9割以上は持ち上げることができました。

[検証②件目]都内と郊外で「つかむ率」はまったく違う数字 クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ

明らかにアームの力はこちらの方が強く、機体の設定に何らかの作為が働いている可能性が高いでしょう。数千円を費やしたものの、完全なキャッチで景品ゲットすることはできませんでしたが、アームが設定できそうなことは伺えました。

[検証③件目]初ゲットで 確率機の疑惑はさらに濃くなる

そこで、同じゲームセンターにあるセガの「UFO CATCHER TRIPLE」にも挑戦。こちらもにまん丸とした動物キャラのぬいぐるみが景品でした。先ほどと同じようにがっちりとキャッチして持ち上げ、そして、上がりきったときにストンと落ちてしまいます……。

[検証③件目]初ゲットで確率機の疑惑はさらに濃くなる クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ

セガ・インタラクティブ
UFO CATCHER TRIPLE


今回も完璧な状態でのゲットは難しいという思いのなか、ついに5000円以上を投入したときに待望の瞬間が訪れます。アームがぬいぐるみをつかみ、そのまま上昇していきますが、上がりきってもアームはピクリとも緩まず。そのままぬいぐるみをホールドした状態で進み、投入口に落としたのです。

[検証③件目]初ゲットで確率機の疑惑はさらに濃くなる クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ2

あくまで視認した限りではありますが、アームがぬいぐるみをキャッチしたときのホールド感も、持ち上げるまでの挙動も、上がりきった後に落ちたときと全く変わりません。

それなのにぬいぐるみが落ちなかったということは、上がりきったときにアームが緩まなかったと推測されます。断定はできませんが、「確率機」なのではという思いを抱かせるには十分な結末と言えなくもありません。

[検証④件目]小型アームの タイプでも結果ほぼ同じ

[検証④件目]小型アームのタイプでも結果ほぼ同じ クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ

北日本通信工業
ジェミニマルチ


そして、最後は都内のゲームセンターに戻り、これまで試した2機種と異なる小型アームの北日本通信工業「ジェミニマルチ」の検証を敢行。小さくて頼りないアームですが、景品のぬいぐるみも小さいため、キャッチして持ち上げる回数はかなり多かったです。

しかし、「ジェミニマルチ」は前の2機種と比べて、アームが上がりきったときのアームの緩みが大きいような印象。せっかく持ち上げても、アームが投入口に動き出す前に落ちてしまうことがほとんどなのです。

[検証④件目]小型アームのタイプでも結果ほぼ同じ クレーンゲームの確率機おすすめ イメージ2

ちなみに、アームから落ちた商品が転がり、2回ほど落とし口に入るという幸運に見舞われました。景品が持ち上がりやすいタイプほど、落とし口に入る確率は高くなるようです。

結局、景品を掴んだのは180回で わずかに1回だけでした

クレーンゲームの確率機検証は、総額2万6000円で180回中1回の成功という結末になりました。その他、偶然景品が転がり、落し口に入ったパターンが2回ありましたが、テクニックというよりかなりのラッキー。回数を重ねるごとに習熟していくことを考えれば、テクニックのせいと言うにはあまりに高すぎる失敗率と考えられます。アームが何らかの作為的な動作を行うことで成功するという推察はあながち間違いとは言えないでしょう。

メーカー、関係者を直撃! 揃って否定するも検証結果は真実を語る

今回、「確率機」についての問い合わせに対して、全ての質問先が「アームの力を確率で変えられる」ということについては否定のコメントを述べました。

しかし、北日本通信工業は「アームの強弱は変更できる」と回答していて、設置店の判断でアームの強弱については任意で設定することができるようです。メーカーは「確率機」を完全否定していますが....

セガAMユーザーサポート
担当者Aさん

※広報に取材連絡するも回答はなし
「公式サイトに確率でアームが強くなるという記載はなく、いただいたご質問に対してご案内できる内容はございません」

北日本通信工業
担当者Bさん

「アームには強弱設定があるのは確かです。しかし、弊社のクレーンゲームに確率の設定がついていることはありません」

日本クレーンゲーム協会
担当者Cさん

「協会としてはクレーンゲームのアームの力を確率で設定しているというご質問にはお答えできません」

多くの関係者が口をつぐむ中、ゲーム業界関係者と話す機会に恵まれました。肩書きや名前は絶対に掲載しないという条件のもとで語ってくれたのが、「クレーンゲームに確率機はある」ということ。どの機種ということについては濁していましたが、それでも彼の言葉を信じるなら「確率機」は存在するようです。

以上、クレーンゲームの検証でした。ゲームセンターがビジネスということを考えれば、ポンポンと景品を提供できないのは理解できます。ただ、もし「確率機」が事実であるならば、やはり真実を伝えるべきでしょう。そうでなければ、子どもに「今のなんで取れなかったの?」と聞かれた時に、なんと答えたらいいんでしょうか?