Apple初のノイキャンヘッドホンが7万円で登場!
2020年12月にアップルから初のヘッドホンが登場しました(傘下のビーツからは多数のヘッドホンが登場していますが、アップルブランドでは初となります)。
その名も「AirPods Max」。つまり、アップルユーザーお馴染みで未だに大人気の完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」シリーズの新キャラというわけです。
Apple
AirPods Max
実勢価格:6万7980円
サイズ・重量:W168.6×D83.4×H187.3mm・384.8g(本体)、134.5g(ケース)
センサー:光学センサー、ポジションセンサー、ケース検知センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ
チップ:Apple H1チップ
接続:Bluetooth 5.0
その名の通り、iPhoneやMacとのスムーズなペアリング、ノイズキャンセリングや外部音取り込みをはじめとする各種機能は 「Air Pods Pro」とほぼ同一なのですが、約3万円のAir Pods Proに対し、こちらはなんと約7万円。
いくらヘッドホンになったからといっても高すぎではないでしょうか……。
でも、Appleが出すからにはスゴイ新製品のはず。一体どこにそんなコストがかかっていて、7万円の価値があるのかという疑問を確かめるべく、大定番のソニー、ボーズなど同ジャンルの新製品等と比較しつつ、音質や使い勝手を検証してみることにしました。
▼AirPods Maxの基本機能を紹介した【前編】の記事はコチラ
「AirPods Max」を同ジャンル3製品と比較検証
7万円という価格帯だけに、外装の仕上げや使いやすさの工夫が随所にみられるデザインが優秀なAirPods Max。では音質面では同ジャンル製品と比べてどうでしょうか。
今回はプロ2名のご協力のもと、以下の3製品とともに比較検証しました。
ソニー最新作!「WH-1000XM4」
ソニー
WH-1000XM4
実勢価格:3万8876円
ボーズならではの付け心地「700」
ボーズ
Noise Cancelling
Headphones 700
実勢価格:4万6750円
『家電批評』のベストバイのSHURE
シュア
AONIC50
実勢価格:4万882円
3製品ともノイズキャンセリングと外部音取り込み機能を備えています。
それでは検証結果を見てみましょう!
空間オーディオの「臨場感」は嘘みたいにスゴイ!
AirPods Maxの大きな特徴が空間オーディオです。
ヘッドホンのサウンドは本来ステレオなのですが、現実世界の音は前後・左右・上下と3次元の空間を自在に飛び交っています。それをソフトウェア処理で再現する機能が、空間オーディオ。
ヘッドホンをしているのに、音が耳のそばではなく、iPadと自分の間に広大な空間が広がっているように聞こえます。これは新体験です。
この機能はAirPods Proにもありますが、迫力はMaxのほうが明らかに優っています。
「ながら視聴」が快適です
顔を画面からズラしていても、つねに音は画面のほうから聞こえてきます。iPadが邪魔で脇に退けておいても、自然に音が聞こえてくるので、食事をしながら映画鑑賞といった「ながら試聴」が快適にできます。
ソニーの類似機能よりワンランク上の出来栄え
ソニーも空間オーディオと同じような「360 Realty Audio」を導入しています。今回「WH-1000XM4」で試してみましたが、AirPods Maxの空間オーディオのほうがはるかに前後と上下方向の広がりが豊かでした。
対応機器は要チェックです!
こんなにすばらしい空間オーディオですが、iPadは最近の機種のみ対応なので要注意です。
・iPhone 7以降
・ホームボタンのないiPad Pro
・iPad Air 第3世代以降
・iPad mini第5世代以降
・iPad 第6世代以降
Apple TVにもMacにも非対応なのが残念。画面が大きなiPad のほうがiPhoneより映像を楽しめますが、iPadも非対応機種が意外と多いのが惜しいです……。
AirPods Maxのノイキャン品質は歴代最高
最高のノイズキャンセリングを手に入れたいと思うのなら、AirPods Maxは有力候補になります。地下鉄に乗っていても、走行音があまり気にならず、ノイキャン特有の不自然さがありません。
ノイキャンしても音質が変わらない
従来のノイズキャンセリングは音質への悪影響が多いという問題がありました。『家電批評』でベストバイに選んでいるシュアのヘッドホンはそれをかなり解決できていたのですが、やはりノイズキャンセリングはオフのほうが音質は良好です。
▼4製品のノイキャン機能の比較
一方、AirPods Maxはノイズキャンセリングをオンにしても音質が劣化しません。ノイズの打ち消し量もシュアより多く、ソニーやボーズと同等かそれ以上です。また、外部音取り込みも優秀。ソニーやボーズは音の方向感覚が薄れてしまいますが、AirPods Maxは方向感覚がハッキリしていて自然です。
AirPods Maxのノイズキャンセリングは最強です。
外部音取り込みモードもライバルより優秀
屋外でヘッドホンを使うときは安全のためにも外部音取り込みを使いたいところ。
AirPods Maxは音量を下げれば音楽を再生しながらでもお店の人との会話が自然にできました。ひとつ残念なのは、外部音取り込みの効き具合を調整できないこと。できればソニーやシュアのように、調整できる機能がほしいです。
AirPods Maxの音質はベストのシュアーには劣りました
7万円近いAirPods Maxの価格は、オーディオを趣味とするユーザーが買うような「高級ヘッドホン」の領域。しかし音質を検証したところ、下の表のとおり、音質評価が極めて高いシュアを超えるには至りませんでした。
▼4製品の音質の比較
シュアは幾重にも重なった音色や音量の微細な変化を、極めて高い解像度を持つ澄んだ音で再生。そのためギターの弦をピックが擦る音など細かな音まで聞き取りやすいです。
▼シュア「AONIC50」
決してAirPods Maxの音質が悪いというわけではなく、試聴した原田さんは「シュアで聞くと一つ一つの音を聴きにいってしまう。音量を思い切り上げて楽曲を楽しく聴くには AirPods Maxもいい」と言います。
また、この表を見て「ソニーのサウンドはもっと迫力があるイメージだけど……」と思う方もいるかもしれません。実際、パッと聴き比べると4製品で一番迫力があるように聞こえます。ですが、「迫力の正体は音の歪み成分です」と大澤さん。
▼ソニー「WH-1000XM4」
歪みは音のディテールを損なう厄介な存在ですが、うまく使う事で分厚く迫力のある音を作り出すことも可能です。ソニーは歪みを巧みに味方にして多くの人に心地よく聞こえる音を作りますが、ディテールでは音の質は決して高くはないのです。
シュアが4Kテレビなら他はそれ以下というイメージです。
まとめ:空間オーディオの普及を待ちたい!現時点は高い
同ジャンル4製品で比較してみたところ、空間オーディオやノイズキャンセリングでは非常に優れている一方で、音質ではもう一歩だったAirPods Max。
音質面では2万円以上安いシュアに水を開けられ、空間オーディオが使えるサービスも現在ではまだ限定的となると、コスパがよいとは言えません。
対応コンテンツが少ないのがネック
日本で利用できる空間オーディオ対応コンテンツはiTunesStoreでレンタルや購入できる映画と、Apple TV+アプリで配信されている映画やドラマの一部だけ(アメリカではディスニーの配信サービスも対応しているのでもっと楽しめるのですが……)。
▼iTunesStore
▼Apple TV+
AirPods Maxの空間オーディオ自体は激推しなのですが、対応コンテンツの少なさゆえに割高感があります。ただしネットフリックスが空間オーディオ対応を検討しているとの報道もあり、対応サービスが増えれば動画用ヘッドホンとして大いにアリ!
重さは実際に試すのがオススメ
もうひとつの懸念材料は、重さです。装着感は良好ですが、200g台のソニーやボーズに比べてAirPods Maxは384gあり、頭部への負担は大きめ。可能ならば、事前に店頭などで重すぎないか体感してみることをおすすめします。
結論【B+評価】空間オーディオが普及すれば激推しだけど、現時点は高すぎ
以上、AirPods Maxのご紹介でした。
空間オーディオの価値は非常に大きいのですが現時点ではちょっと高すぎるので、もう少し対応コンテンツの普及を待つのがよさそうですね。
臨場感も方向感も頭の周りにある空間も、現実味がスゴい! 僕の脳はほぼ完全に騙されてしまいました