自転車のロックは5分あれば壊せるものと思い知らされました
クロスバイク・ロードバイク・MTBといった高額なスポーツ自転車が人気の一方で、こうした自転車を狙った盗難も増えています。駐輪場に停めるときはもちろん、コンビニで買いものするのに2~3分目を離すだけでもロックは欠かせません。
そこで、サイクリストが買うべきロックはどれか、実際に壊して強度を確認してみました。その結果わかったことは、それなりに丈夫なロックでも5分もあれば壊されてしまう可能性があるということ。Twitterを検索すると、ロックしていても盗難被害に遭ったユーザーがたくさんいます。これを前提に、買うべきロックや使い方を考えて、盗難対策を行いましょう。
選び方のポイントは以下のふたつです。
自転車ロックは3種類+α
携帯性と強度に差があります
下のグラフは、2018年の「施錠なし/あり」それぞれの自転車盗難件数です。思いのほか差がないことがわかりますね。これは、ロックをしていても選び方や方法が間違っていた可能性が高いです。
丈夫なロックを使う、地球ロック(柵や柱など地面に固定されたものと結びつけること。アースロックとも)する、2本使うなどして、盗難防止対策をする必要があります。盗難保険を検討する前に、鍵の掛け方に注意しましょう。
■2018年自転車盗難件数
では、実際に用途にあった自転車ロックを選ぶために、その種類を見ていきましょう。
代表的なのが「ワイヤーロック」「チェーンロック」「U字ロック」です。コンパクトなためロードバイクユーザーに好まれる「ワイヤーロック」は、軽い反面とにかく貧弱。長時間や視界から外れる場所での使用には向きません。一方で、「U字型ロック」は丈夫で長時間駐輪にも使えますが、重いためカバンがなければ持ち運ぶのも一苦労。どこで何をするのか、どのくらいの時間駐輪するのかで選びましょう。
【ワイヤーロック】
ワイヤー式の鍵は細い針金を束ねただけなのでコンパクトで軽量、持ち歩きが容易です。ただ、強度はほとんどないため長時間の駐輪には向きません。「カフェロック」「ワイヤー錠」とも呼ばれます。高級サドル単体の盗難防止に使われることもあります。
【チェーンロック】
ワイヤーロックに比べて強度は上がりますが、長いもの、丈夫なものほど重くなります。地球ロックにも使える、扱いやすいロックです。
【U字ロック】
太さがあるため簡単には破壊できず、防犯性は高いです。ただ、大きく重いため持ち歩くのは少々めんどう。短いので地球ロックをする場所を選びます。
【その他のロック】
厚めの金属板をつなげた「ブレードロック」、フレームに取り付ける「ブースターロック」、振動で音が鳴る「アラームロック」など、他にも種類は豊富です。
なお、ロックシステムにはキー(鍵)を使用する製品とダイヤル式の製品があります。
種類によってロック方法が変わります
ポールのような地面との固定物に自転車をロックする「地球ロック」は盗難への有効な対策のひとつです。使うのはワイヤーやチェーンのようにある程度長さがあるロックが好ましいですが、強度に不安が残ります。一方で、強度に優れたU字ロックは、短いため場所によっては地球ロックをするのが難しいことも。状況に応じてワイヤーロック・チェーンロックとU字ロックを使い分けたり、両方使用するなど柔軟に対応したいです。
【ワイヤーロック・チェーンロック】
長さがあるためフレームとホイールにとおしたうえで、ポールやスタンドなどに固定する、いわゆる「地球ロック」ができます。
【U字ロック】
フレームとホイールを固定して自転車を走れない状態にします。ただ、ロックごと持ち去られたらお手上げです。
【ワイヤーロック・チェーンロック+U字ロック】
U字ロックで走れない状態にしたうえ、ワイヤーロックやチェーンロックで地球ロックをすれば、簡単には手を出せません。
なお、街なかでもホイールにロックをとおしているだけの自転車を見かけますが、持ち去りできるうえ破壊もしやすい状態です。せめて地球ロックはしましょう。
フロントフォークやシートステーにU字ロックをかけて地球ロックをしている自転車もありますが、ロードバイク・クロスバイク・MTB(マウンテンバイク)などに採用されているクイックリリースやスルーアクスル規格の場合は、ホイールのみを持ち去られてしまう可能性があります。
ホームセンターで手に入る工具でロックの強度を確認しました
今回のテストの主目的は、ロックの「強度」を調べること。そのために、ホームセンターなどでも購入できる工具を用意して、実際に壊してみています。より手をかけず破壊できたロックほど得点が低くなっています。「携帯性」と「長さ」もあわせて評価しました。
得点は以下のとおりです。
強度 [20pt]
大・中・小の3種類の工具を使い、どれで壊せるかをテストしました。いずれでも壊れなかったとき用の工具も用意しました。
携帯性 [5pt]
サイクリングのおともには携帯性の高いロックが必要なため、軽いロックほど高評価にしました。
長さ [5pt]
10製品を使い比べてみると、長さのあるロックほど使いやすく、地球ロックもできて安全でした。長さがあれば友だちの自転車までまとめてロックできました。
以上の基準で評価した「最強の自転車の鍵」ランキングを発表します。安心な鍵を探している方、ロードバイク・クロスバイクを購入予定の方はチェックしてみてください。
軽いのに簡単には壊せない PALMY P-ES-101AL
丈夫なうえに軽さも兼ね備えていた唯一のロックが第1位のPALMY「P-ES-101AL」です。U字部分が太く丈夫なため、いずれの工具でも表面に傷をつけるのが精一杯でした。
壊せなかったのはU字がただのパイプではなく中身まで詰まった丸棒だからこそ。鉄製の丸棒であればその重さから携帯するのは敬遠されがちですが、本製品はアルミを使用することで重さを約300グラムに抑えているため、携帯しやすいです。
ただし、長さはないため地球ロックをするには場所を選びます。サイクリング中でも長時間の駐輪予定があるときは、地球ロック用のチェーンロックなどと併用することをおすすめします。
PALMY
アルミシャックルロック P-ES-101AL
実勢価格:1773円
長さ:約460mm(実測)
重量:約297g(本体のみ/実測)
付属品:キー3本
強度:16/20
携帯性:3/5
長さ:2/5
合計:21/30pt
形式:キータイプ
形状:U字
■傷はつくも壊れず
3種類の工具では傷はつけられましたが、壊れる気配はありません。ただし、アルミ素材は柔らかいため、工具を選んで時間をかければ壊すことはできました。
■チェーンロックとセットがベスト
U字ロックはフレームとホイールをがっちりロックすることができます。細めのポールならフレームをつなぐこともできます。
第4位のABUSのような長めのチェーンロックを併用し、ポールやスタンドに地球ロックすれば盗難の可能性はグッと低下します。
長時間の駐輪予定があるときは、このように地球ロック用のチェーンロックなどと併用することをおすすめします。
ワイヤー付属で地球ロックも可能 BUYFULL 自転車ロック&1200mm ワイヤーロックセット
第1位のPALMY以上に頑強なU字ロックと長めのワイヤーがセットになった第2位のBUYFULL「自転車ロック&1200mm ワイヤーロックセット」。はじめの1本にも最適です。
テストでもU字は浅い傷がつく程度でしたが、ワイヤーはそれほど強度がないので注意しましょう。
BUYFULL
自転車ロック&1200mm ワイヤーロックセット
実勢価格:2580円
サイズ:最大径16×内縦145×内横70mm(U字)、直径12×長さ1200mm(ワイヤー)
重量:約748g(U字/実測)、約271g(ワイヤー/実測)
強度:16/20
携帯性:1/5
長さ:3/5
合計:20/30pt
形式:キータイプ
形状:U字/ワイヤー式
U字ロックは表面が少し傷ついた程度ですが、ワイヤーロックは切断できてしまいました。
後輪のブレーキにロックを追加 ユニークワン MagicOne ブースターロック
第3位はユニークワン「MagicOneブースターロック」です。後輪のVブレーキもしくはカンチブレーキの台座に固定するタイプ。そのため、ロードバイク用ではなくVブレーキ台座のあるクロスバイク用と言えます。
固定するため自転車は重くなりますが、自分で持ち運ぶ必要がないのはメリットといえます。
ユニークワン
MagicOne ブースターロック
実勢価格:3741円
長さ:約420mm(実測)
重量:約574g(本体のみ/実測)
付属品:キー3本
強度:16/20
携帯性:1/5
長さ:2/5
合計:19/30pt
形式:キータイプ
形状:ブースター
ロック部分の閂はとにかく固く、生半可では壊れそうにありません。ただ、構造的に弱点となる部分もありました。
なお、持ち去り対策にはならないため、あわせて地球ロックも行いたいです。
第4位には、地球ロックがしやすいチェーンロックがランクインしました。
4位: 意外と軽いから携帯用にもなります ABUS 4804KEY
サイクリストにはおなじみのメーカー、ABUS(アブス)「4804KEY」が第4位でした。
本製品は同社の基準でセキュリティーレベル4ですが、最高でレベル15の製品までラインナップされています。チェーンが細く携帯には便利ですが、レベルからもわかるように強度はそれほど高くありません。
ABUS
4804KEY
実勢価格:3278円
長さ:約1100mm
厚さ:4mm
重量:約493g(本体のみ/実測)
付属品:キー2本
強度:12/20
携帯性:3/5
長さ:3/5
合計:18/30pt
形式:キータイプ
形状:チェーン
傷防止用のカバーはケブラー素材などではなかったため、ハサミでも切断できました。
5位: 地球ロックにはチェーンが最適 Sportneer チェーンロック
第5位になったSportneer「チェーンロック」は、購入時にAmazonの自転車用チェーンロック部門で1位だった人気商品。手にとればズッシリとした重量感があり、ABUSよりもチェーンの輪の大きさや太さは上ですが、強度は同程度でした。
ダイアルは5桁で数字の組み合わせは10万とおりとなり、解除しにくいのはありがたいです。全体にゴツいぶん重く、長さが短いために得点は低くなりました。
Sportneer
チェーンロック
実勢価格:1399円
長さ:約975mm
重量:約651g(本体のみ/実測)
ダイアル:5桁
強度:12/20
携帯性:1/5
長さ:3/5
合計:16/30pt
形式:ダイアル式
形状:チェーン
チェーンといえども工具を選べば壊れてしまいました。ただ、ワイヤーロックよりも時間稼ぎはできます。
5位: 太めのワイヤーですが過信は禁物 ENGG ダイヤルロック
同点で第5位のENGG「ダイヤルロック」は、購入時にAmazonの自転車用ケーブルロック部門で第1位だった、ダイヤル式ワイヤーロック。
1000円以下と安価ですが、表面を覆うビニールの皮膜が厚く、簡単には切断できないのは◎です。こちらもダイアルは5桁になります。
ENGG
ダイヤルロック
実勢価格:999円
長さ:1200mm
重量:約347g(本体のみ/実測)
直径:12mm
ダイアル:5桁
強度:9/20
携帯性:3/5
長さ:4/5
合計:16/30pt
形式:ダイアル式
形状:ワイヤー
7位: 強度はチェーンと同程度 Mishuo ブレードロック
6枚のブレードをつないで円状にするのが、Mishuo「ブレードロック」です。意外と大きく重さもあり、見た目のゴツさだけで盗難対策になりそうでした。ただ、ブレードはチェーンより少し丈夫な程度で、接続部がグラつくのも不安です。
Mishuo
ブレードロック
実勢価格:2999円
長さ:約800mm
サイズ:W65×H185mm
重量:約623g(本体のみ/実測)
ダイアル:4桁
強度:12/20
携帯性:1/5
長さ:2/5
合計:15/30pt
形式:ダイアル式
形状:ブレード
第8位以下は、すべて細めのワイヤーロックとなりました。
8位: 唯一無二の携帯性 CROPS Q3 CP-SPD08
実測で約89gという軽さが特徴なのが、第8位のCROPS「Q3 CP-SPD08」です。カバンを持たずにロングライドしたいサイクリストにとっては最高の相棒になります。とはいえ、強度はほぼないため、使うときは見える場所に駐輪しましょう。
CROPS
Q3 CP-SPD08
実勢価格:1729円
長さ:1800mm
重量:約89g(本体のみ/実測)
直径:φ4
ダイアル:3桁
強度:4/20
携帯性:5/5
長さ:5/5
合計:14/30pt
形式:ダイアル
形状:ワイヤー
9位: 忘れたときの緊急用ならあり 100円均一 自転車ロック
第9位になったのは100円均一で購入した60cmのワイヤーロックでした。CROPSと同等の太さなので長時間の駐輪には向きませんが、ないよりはマシ。ロックを携帯し忘れたときなど緊急時に買うならありですが、常用するのは控えたいです。
100円均一
自転車ロック
実勢価格:110円
長さ:約600mm
重量:約78g(本体のみ/実測)
強度:4/20
携帯性:5/5
長さ:2/5
合計:11/30pt
形式:キータイプ
形状:ワイヤー
10位: 大きなアラーム音で防犯 ドッペルギャンガー アラームde南京錠
ロックに振動を与えると110デシベルの大音量でアラームが鳴るドッペルギャンガー「アラームde南京錠」は、窃盗犯を驚かせるには十分。ただ、付属のワイヤーは細いため、振動させず切れてしまいました。もう少し強度のある鍵と組み合わせると、アラームの効果が活きてきそうです。
ドッペルギャンガー
アラームde南京錠
実勢価格:2887円
サイズ:W94xD33xH128mm(本体)、直径φ4×長さ1400mm(ワイヤー)
重量:約502g(U字/実測)、約42g(ワイヤー/実測)
付属品:キー2本
強度:4/20
携帯性:1/5
長さ:4/5
合計:9/30pt
形式:キータイプ
形状:ワイヤー(アラーム式)
残念ながら防水ではないため、屋外の駐輪場では効果が発揮できないかもしれません。
以上、今回検証を行った10製品を紹介しました。
最後に、過去の検証で高評価だったU字ロックを追加で紹介します。
頑丈素材と存在感で窃盗抑止! パナソニック U型ロック SAJ080
今回の検証で第1位だったP-ES-101ALと同様にメインキーとしてオススメできるU字ロックのが、パナソニック「シリコンカバー採用 U型ロック SAJ080」です。頑丈な素材とディンプルキーにより、窃盗の主な手口である切断とピッキングのどちらにも強い!
またシリコンでカバーされているため、自転車と接触してもキズがつきにくいのも高ポイントでした。
パナソニック
シリコンカバー採用 U型ロック SAJ080
実勢価格:1722円
重量:417g
素材の頑丈さ :S
持ち運びやすさ :A
ロックのしやすさ :A
※送客パーツ
がっしりしたブラックのアームは存在感があり、見るからに切れにくそう。一目で相手を怯ませる重厚感が高評価。「防犯効果が高そうな見た目」というレビューもありました。
片側しか開かないタイプはスポークに引っかかり通しにくいですが、2ヵ所とも外せることで、取り付けがスムーズにできます。
内側は太めの金属で頑丈。小型の工具では歯が立ちません。また、切断だけでなくピッキング防止も考えられていて、Wディンプルキーが採用されています。
P-ES-101ALに比べると100g以上重たいのは気になりますが、たいせつな自転車を守るためには背に腹は変えられません。
いかがでしたでしょうか。工具を使った盗難に対しては、どんなロックを使っても「絶対に安全」とはいいきれません。ただ、厳重にロックをすれば盗みにくいと思わせることができますし、ロックを破壊されそうになった際にも時間稼ぎになります。
おすすめは頑強なU字ロックとチェーンやワイヤーなど長さのあるロックの組み合わせですが、持ち運べるならU字ロックを複数利用すればより強固になります。大切な自転車をしっかりと守りましょう。